『批判的工学主義の建築 ソーシャル・アーキテクチャをめざして』/藤村 龍至(著)

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 個人的に注目している建築家/ソーシャルアーキテクト藤村 龍至氏による意欲的な著書を紹介します。

 建築には、「意匠」と「構造設計」があって、種々の制限の中で、クライアントの要望にいかに応えていくかという点が、自分自身の仕事であるWebディレクション業務に共通点があり、活かせるのではないかと考え、次第に建築とその方法論に興味を持つようになりました。美的な要素と設計、そして客先要望を実現することの両立が求められる点に共通項があります。

 そんな中で特に藤村氏に注目したのは、ワークショップなどを通じて丁寧に意思決定をまとめていく従来型のカリスマ建築家ではない方法論が新鮮に感じられ、腑に落ちるところがあったのが理由です。

 本書の序章に、議題を次のように設定するとあります。
[1]1995年以後の情報化・グローバル化のプロセスで現れた都市像、建築像の変化を整理すること
[2]近代化以後のアーキテクト像の変化を整理し、現代のアーキテクト像を提示すること
[3]今後の社会の展望と、建築が貢献できることを提示すること

 通読して直感的には建築家の視点でみた近代以降の歴史の書という感覚を持ちました。ただし、[2]に対応する4章~6章は、建築に関する前提知識がある程度ないと深く読み解くには困難だと感じます。

 また、藤村氏ご自身の方法論であるジャンプしない、枝分かれしない、後戻りしない「超線形設計プロセス論」がこの4章~6章で展開されていくのですが、図らずもジャンプを感じてしまうところがあります。これまでの歴史認識とこれからの展望は荒削りながら大変共感できるのですが、中盤が前半後半と馴染んでいない違和感を感じました。

 今後の続編として、「超線形設計プロセス論」の深堀りと具体的な解説を期待したいと思います。